やわらかい生活

寺島しのぶが気になって観にいこうと思ってたら今日がレイトショー最終日。気づいてよかった…。

冒頭、蒲田の街がしばらく映し出される。”粋のない下町”蒲田。今年の初め大森の池上本願寺に行った時に、なんて力の抜けた街だろうと思い、住んでみたいなと思った場所。さほど人も多くなく夜になると静かで、ぶらぶらするにはもってこいだ。寺島しのぶの衣装は、カットソーにGジャンを羽織り、大きな柄の大きく揺れる長めのスカートにゆったりしたブーツでかっこいい。引っ越した蒲田のアパートは外見はぼろいけど、中に入れば白い壁。大柄で色とりどりのカーテンとベッドカバー、チェストはダークブラウンのシンプルなものだし、ダイニングテーブルはフロストガラスで主張しすぎず、良い雰囲気の部屋だった。あんな風に余計なものは持たず、シンプルに暮らしたい。

この映画は、オフィシャルサイト*1のコメントに誰かが書いていたけれど、”癒される”と思って観に行くと足元を掬われる。孤独を受け入れ、それなりにひとりで楽しく生きているところに、ひょいっと誰かが入ってくると途端に淋しさに支配される。その感情に気づかれないよう自身を蔑むことで安心感を得ていたのに、否定されると一気に足元がグラつく。その場しのぎのぬくもりは永遠には続かないことがよくわかる。一見さわやかでありながら、観終わった後はずっしりと重く圧し掛かる映画。

観終わった後、とにかく誰でも良いから話をしないと落ち着かない気分になるのだが、そうしたところで何も解決しない。映画館を出てから温かく甘いドリンクを飲んだら少しだけ気分は晴れたが、観終わって3時間以上経った今も地に足がついてない感じがする。事あるごとにこの映画を思い出しそう。