電車で待ち合わせの場所へ。今日こそは先に待ってるつもりがやっぱりダメで少し待たせてしまった。1年以上ぶりに見る彼は少しだけ白髪が増えたようだった。昔とは違うラフな格好でニコニコと笑っている。

福岡の街に立っている自分に違和感があるのかしきりに周囲を気にしていた。近くで中華のランチを食べながらお互いの近況をぽつぽつと話す。共同経営の話を聞いて少しだけ安心する。4人全員が試験に通らないと共同経営できないらしいけど、前向きにがんばっていることが希望の光だ。

彼は先の予定が詰まっていたのでほんの短い間しか会えず、残念なことに一緒に電車に乗ることもできなかった。許されないことが多いのはわかっていたはずが、ひさしぶりのことでなんだかとても寂しいことに思えた。「じゃあまたね」と手を振ってお互い別の方向に歩きだした時に、前みたいに握手をするのを忘れていたことに気づいた。振り返ってみたけれど彼の姿はもうすでに遠く、走って追いかけるにはあまりにも離れすぎていた。ゆっくり歩く背中を見ながら空しい感情が湧いてきたので、踵を返しもう二度と振り返らなかった。